昨今SDGsへの貢献が重視される中で、企業はCSV経営を進めることが求められるようになりました。
CSVを意識しない経営を続けていると、やがて市場では評価されなくなり、ビジネスは衰退に追い込まれる可能性もあります。
本記事では企業活動において重要視されるCSVがどんな概念なのか、また実際の経営やマーケティングでの活用方法などについて、詳しく解説してみました。
CSVはCreating Shared Valueの頭文字をとった企業経営の概念です。
Creating Shared Valueは「共有価値の創造」という意味を持ちます。
CSVについて理解する上で重要となるのは、誰と誰が価値を「共有」するかという点です。
簡単に言えば企業と社会がともに価値を受けられるビジネスを指します。
企業にとっての価値とは、ズバリ利益を大きくすることです。
営利企業である以上、ビジネスで生き残っていくためには、利益の追求は欠かせません。
一方で社会にとっての価値とは、今現在の社会が抱えている様々な課題を解決することです。
例えばZoomなどのオンライン会議ツールの発展はいい例です。
オンライン会議ツールの開発会社が利益を上げたことはもちろん、それに伴って以下のような社会的課題の解決にも繋がりました。
CSRはCorporate Social Responsibilityの頭文字を取った企業経営の概念です。
上述したCSVとは意味が似ているものの、大きく意味は異なります。
Corporate Social Responsibilityを日本語訳すると、「企業の社会的責任」ということです。
一般的にCSRは、「企業の稼ぐ利益のうち〇%を社会貢献のための活動に投資する」というような意味になります。
例えば飲料メーカーが、企業活動を通じて得た利益の一部を途上国の学校建設のために利用するというようなイメージです。
実際に様々な企業のコーポレートサイトを見ても、環境保護、人権保護、地域貢献、SDGsなど様々なテーマの社機課題に対して、CSRに取り組んでいるという事例が見られます。
しかしCSRは、本業を通じて社会的に大きなデメリットを与えている可能性もあります。
例えば飲料メーカーの場合、飲料生産のために途上国の安い労働力を酷使しているかもしれないということです。
詳しくは後述しますが、CSRは実は不完全・不健全な考え方であるとの意見も強まったことで、CSVの考え方が重視されるようになりました。
CSVとCSRは似ている概念ですが、方向性は大きく異なります。
大きな違いは社会的責任の内容が、企業の実態と関係あるか否かです。
CSVは企業活動の延長線上に社会課題の解決があります。
一方でCSRは企業活動とは別の部分での社会課題解決を目指します。
例えば飲料メーカーを例に考えてみましょう。
飲料メーカーが行うCSVは、自社の開発した飲料を飲んだユーザーが、免疫力を高めていき、結果として社会全体の病気の予防、医療費の軽減を目指すというイメージです。
一方で飲料メーカーが行うCSRは、飲料販売を通じて得た利益を元手に、環境保護活動に投資するというようなイメージとなります。
どちらも社会的に意義があることには間違いありません。
CSVが注目されている大きな理由は、事業と関係ない分野での社会貢献を果たすことが、企業の抱える資源(資産・人的資本など)の無駄遣いになるという考え方があるためです。
特に会社の株式を保有している投資家としては、「なるべく利益を最大化する形で事業を行ってほしい」と考えています。
CSRは本業とは別枠のテーマに対して投資をするので、CSR活動が利益の最大化に貢献するわけではありません。
一方でCSVは、本業と同じテーマでの社会的課題解決を目指します。
さらに言えば、社会的課題を解決するための一番の近道となるのが、本業の利益を伸ばしていくことにあるのです。
つまりCSVは「利益を最大化したい」という投資家の思いを叶えながら、なおかつ社会的課題の解決も果たせるハイブリッドな経営体制と言えるでしょう。
また近年はSDGsの重要性が叫ばれています。
SDGsに貢献しない会社は、やがて淘汰されることはほぼ間違いないでしょう。
株主やユーザーから評価され、ビジネスの市場で長く生き残っていくためにも、CSVの注目度が高まっているのです。
企業がCSV経営を行うことのメリットについて、詳しく解説します。
CSV経営を通じて得られる最も大きなメリットは、ユーザーから良い企業というイメージを持ってもらえることです。
自分の消費行動を通じて社会課題の解決にも貢献できる、とユーザーに考えてもらえれば、自社商品やサービスを選んでもらえる可能性も高くなるでしょう。
企業が売上を拡大していくためには、商品のスペックや価格などももちろん重要ですが、それ以上にブランドイメージも重要視されます。
実際に日ごろ生活する中でも、複数の選択肢があった時に、「イメージが良いこちらの会社の商品を選ぼう」といった消費行動を起こす方も少なくないはずです。
良いブランドイメージが構築できれば、「ネームバリュー」という点でも他社と差別化されるので、既存のユーザーを維持することに加えて、新規の顧客も獲得しやすくなります。
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CSV経営は1つの部門のみでは完結しません。
CSVを達成するための取り組みは、全社一体となって進める必要があるので、必然的に部署間でのつながりが生まれます。
また場合によっては、他の企業とも一体となってビジネスを進めるケースもあるでしょう。
もちろん意見や価値観がぶつかることもありますが、逆に活発な意見交換によって新たな価値を創出できる可能性もあります。
凝り固まった考え方や価値観を打破して、新たな価値創造に繋がる可能性がある点も、CSVのメリットです。
CSVは理想的な経営体制のように思われることも多くありますが、もちろんデメリットもあります。
具体的にどんなデメリットがあるのか、詳しくチェックしておきましょう。
CSVを意識して経営しようとすると、どうしても利益を稼ぐ効率は悪くなります。
例えば利益を最大化するためには、人件費をカットして低賃金で労働させることが有効であるためです。
自社だけCSVを意識しようと思っても、他社がCSVに一切関心がなければ、市場で遅れを取ってしまう可能性もあります。
そのため本気でCSVに取り組むためには、他社とも足並みを揃えて同じ方向性で進めなければなりません。
一社だけで社会課題を完全に解決するのが難しいという点に、CSVのデメリットがあります。
CSVで設定した目標(社会課題の解決)は、すぐに結果が出るわけではありません。
どんな社会課題であっても、取り組みを行ってから結果が出るまでには長い時間を要します。
年単位で時間がかかるのは当たり前、場合によっては数十年以上を要することもあるでしょう。
そのため「なかなか進捗度が見えづらい」「本当に効果的なアプローチなのか分からない」「CSVのための社員一人ひとりのモチベーションを高めづらい」といった点にも、CSV経営のデメリットがあります。
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CSVを実現するためには、CSVに向けた経営戦略の立案が重要です。
実際にCSVに基づいた経営戦略を立案するためのアプローチとして、3つのステップを紹介します。
企業としては最初に、市場や社会的なニーズを探る必要があります。
どれだけ良い製品を作っても、ニーズがなければ売れないためです。
売れなければ、CSVの実現はもちろんのこと、企業が最優先で負うべき利益獲得という目標も達成できません。
またどんなCSVを達成したいのかという見通しを持つためにも、市場の分析は重要です。
市場を分析した結果としてどんな社会的ニーズがあるのかを把握できたら、今度はそのニーズ(CSV)を達成できる製品、サービスの生産を考えましょう。
CSV実現のための戦略立案を行う中で、既存製品やサービスをアップグレードしたり、新たな製品展開に発展したりする可能性もあります。
バリューチェーンとは、利益を生み出すために営まれる企業の一連の活動を指します。
具体的にバリューチェーンは、以下のように分類すると分かりやすいでしょう。
CSVは製品やサービスが売れた延長線上にある社会的な変化を目指す活動です。
そのため従来よりも長期スパンでバリューチェーンについて考えることが求められます。
初めてCSVを目指すという段階にある企業は、これまでよりも長期スパンで、さらにこれまでよりも多くのステークホルダーについて考えながら、バリューチェーンの再定義をしましょう。
例えばこれまでは、環境負荷を軽減するための取組はコストが大きく、企業にとってはコスパの悪い施策と考えられていました。
しかし昨今は技術の発展も著しく、環境負荷を軽減する施策を導入した方が、長期的に見て効率的な運営ができるようになっています。
環境負荷の軽減はSDGsの観点からも、各企業が積極的に取り組むべきと言えるでしょう。
上述した通り、CSVは1社だけで実現するのが難しいというデメリットがあります。
裏を返せば、他社の力も必ず求められるということです。
近年はインターネットの発展によって、世界中どこでも場所を問わずにリアルタイムでコミュニケーションを取れるようになりました。
しかし物資を輸送するなどのケースでは、やはり時間や日数がかかります。
企業活動の中で長い時間を要する工程があれば、その分経営効率は悪くなります。
また物資を運ぶ際に自動車(トラック)を長距離、長時間走らせるとすれば、CO2の排出や交通渋滞など、社会に対してデメリットをもたらすこともあるでしょう。
だからこそ、なるべく自社の事業拠点の近くには、同業他社や大学、研究機関などを集結させた産業クラスターを作っておくことが重要です。
近隣の地域で産業クラスターが形成されていれば、企業活動にかかる様々なコストを低減できるため、利益の最大化ができるようになります。
ただし自社以外が「どこに拠点を置くのか」という判断に、自社の意思は反映されません。
効率よくCSV経営を行えるようにするためには、事前に他社や研究機関と特定のエリアで産業クラスターを作ることを相談しておくなどのアプローチが求められます。
日本国内において、実際に企業がCSVに取り組んでいる事例を紹介します。
紹介するのは、誰もが社名を聞いたことがあると思われる以下の5社です。
各社の取り組みについて、詳しくチェックしてみましょう。
飲料メーカー大手の株式会社伊藤園は、高品質な緑茶の茶葉を安定的に仕入れるという自社の取り組みを行う中で、茶産地育成事業を推し進めてきました。
というのも、国内の茶葉農業は安価な輸入茶葉との価格競争や後継者不足などの影響によって、衰退していたためです。
実際に日本国内には、茶葉農園の遊休地が増えているという現実がありました。
そこで「茶葉農業の復興」というCSV施策に取り組んだのが株式会社伊藤園です。
その結果、株式会社伊藤園は国内で生産される茶葉で作る緑茶(お~いお茶など)が人気を集め、飲料市場でも高いシェアを誇っています。
同時に、日本国内の茶葉農業の復活にも一役買いました。 自社の目的と社会課題の解決を同時に達成していることから、まさにCSVの成功事例と言えるでしょう。
ネスレ日本株式会社は、「食の持つ力で、現在そしてこれからの世代のすべての人々の生活の質を高めていきます」という存在意義を掲げています。
そして美味しい飲料や食品の生産を拡大しつつ、同時に健康増進も推し進めるなど、CSV的な取り組みを進めてきました。
また2019年以降は自社の看板商品とも言えるキットカットの外部素材(包装など)を、すべてプラスチックから紙に変更するという取り組みを始めています。
2021年末には、取り組み開始以来累計790トンものプラスチック削減を果たすなど、環境保護の点でも大きな実績を残してきました。
今後も持続可能な食料供給システムを推進すべく、ネスレ日本株式会社はCSVの取り組みを進めていきます。
キリン株式会社は「食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV先進企業となる」という目標を定めて、会社全体でCSV活動を推進しています。
特にCSVの柱として定めているのは、以下3つの点です。
分野 | CSV目標 |
---|---|
健康 | 健康な人を増やし、疫病に至る人を減らし、治療に関わる人に貢献する |
コミュニティ | 人と人とのつながりを創り、「心と体」に、そして「社会」に前向きな力を作り出す |
環境 | ポジティブインパクトで、持続可能な地球環境を次世代につなぐ |
またキリン株式会社は酒類メーカーとして、「全ての事業展開国で、アルコールの有害摂取の根絶に向けた取り組みを着実に進展させる。」というCSVの取り組みも行っています。
プリンターなどの事務機器や光学機器などのメーカーとして知られる株式会社リコーは、「脱炭素社会の実現」を掲げてCSVの取り組みを進めています。
また海外の貧困問題解決のためのCSV活動を行っていることでも有名です。
実際に株式会リコーは、「BOPプロジェクト活動」を通じて、インドの現地住民に働く場所を提供しています。
雇用機会の提供に加えて生活レベルを向上させることはもちろんですが、きちんと教育を積んだ現地住民を、将来的な自社のビジネスを担う人材として育成するのも狙いの1つです。
自動車メーカー最大手のトヨタ自動車株式会社は、環境負荷を減らすための取り組みを続けています。
特に自動車は走行時のCO2の大量排出などのイメージがあり、「環境保護にとってマイナスの要因」と見られることも少なくありません。
しかしトヨタ自動車株式会社は、「トヨタ環境チャレンジ2050」を掲げて、CO2排出量が少ない自動車の開発や電気自動車の開発、さらに自動運転技術の発展などに取り組んでいます。
またトヨタ自動車株式会社は、自動車産業とは直接関わらない領域に対するCSV活動も進めています。
具体的には以下のような取り組みです。
CSVとは自社の展開する事業の拡大を通じて、社会の様々な課題を解決するための取り組みです。
CSVの取り組みはなかなかすぐに効果が出にくいというデメリットもありますが、しっかりと進めていくことで、ブランドイメージが向上し、自社のファンになってもらえるというメリットがあります。
ブランドイメージが向上すれば、それだけで他社に対する差別化ができるので、自社の商品やサービスを選んでもらいやすくなるでしょう。
また昨今は世界的にもSDGsな取り組みを進めることが推奨されています。
もはや今の時代は、環境に負荷をかけた事業拡大、貧困問題を加速させるような低賃金での人材採用などをしていても、ビジネスの世界では生き残れないということです。
したがって「今後も長くビジネスを続けていきたい」と考えているならば、早めにCSVの取り組みを進めるようにしましょう。
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