近年、デジタルマーケティングにおいて重要な役割を果たしているクッキー(Cookie)の利用規制が進んでおり、クッキーレスの取り組みが注目を集めています。
この動きによって、マーケティングにおけるデータ収集やターゲティングに大きな影響が出ることが予想されます。
今回は、クッキーレスによってどんな影響があるのか、取り組むべき施策もあわせて解説していきます。
クッキーはWebサイトやWebサーバーから発行される小さなテキストファイルであり、ユーザーの閲覧履歴などの情報がブラウザに保存されます。
現在、インターネット利用者のプライバシー保護を目的としたクッキーの規制が進んでおり、その利用が制限される可能性があります。
この規制のことをクッキーレスといいます。
クッキーはユーザーの利便性向上を目的として、ユーザーの行動情報を保存し活用する仕組みです。
例えば、一度ログインすればウィンドウを閉じた後もログイン状態が維持されるなど多くの便利な機能を提供しています。
しかし、一方でユーザーの行動履歴が企業のマーケティング活動に利用されることもあります。
リターゲティング広告など、クッキーを活用した広告手法は現在のマーケティング分野で欠かせない存在です。
クッキーにはファーストパーティクッキーとサードパーティクッキーの2種類があり、発行された場所と発行者が同じであるかによって区別されます。
Webサイトを訪れた際、その運営者がクッキーを発行した場合はファーストパーティクッキーとなります。
ログイン状態の維持や前回の訪問時の状態を再現するために利用されます。
一方サードパーティクッキーは、訪問中のサイトとは別のドメインから発行されるクッキーで、主に広告配信や効果測定に利用されます。
ユーザーの行動を把握することでリターゲティング広告を表示したり、広告の効果を分析したりすることができます。
クッキーレスの動きが進んでいますが、クッキー自体に問題があるわけではありません。
問題はクッキーの使われ方にあります。
特に、マーケティング業界で広く使われているサードパーティクッキーが規制対象となっています。
サードパーティクッキーは個人の閲覧履歴などから個人情報が収集され、企業の広告活動に利用されているからです。
一部の人にとって、自分に合った広告が表示されるのは便利なことかもしれません。
しかし、自分の行動が追跡され自分の個人情報が広告業界に利用されていることに不快感を覚える人もいます。
広告活動におけるクッキーの使用は個人情報の利用に相当し、コンプライアンス上の問題やユーザーの視点が欠如している問題が存在しています。
そのため、クッキーを使った広告活動においては個人情報の使用について十分な許諾が行われているかどうかが問題視されています。
クッキーの使われ方に疑問が生じたため、ブラウザ大手はクッキーによる情報収集に対する対応を進めています。
AppleのSafariやFirefoxはトラッキング防止機能を実装し、Google ChromeやMicrosoft Edgeもサードパーティクッキーの利用を2023年までに廃止する予定です。
EUやアメリカでは既にクッキーによる情報取得制限が法制化されており、日本でも2022年に施行された改正個人情報保護法によってクッキーの利用には事前同意が必要となります。
これらの動きからも、クッキーレスが「業界の潮流」だけではなく社会全体の流れになりつつあることが伺えます。
サードパーティクッキーの規制により、広告業界は深刻な影響を受けることになります。
また、サードパーティデータの収集も制限されることから、ファーストパーティデータが注目を集めています。
ファーストパーティデータは、オフィシャルサイトやキャンペーンサイト、展示会や見本市、セミナーや講演会など、自社の活動を通じて情報を収集した人々のデータです。
これらの人々は、自社や自社製品・サービスに興味を持っている傾向があります。
出所が明確で信頼性が高く、タッチポイントによってカテゴライズし分析することができます。
そのため、サードパーティからの情報と比較してファーストパーティデータは質が高いです。
ファーストパーティデータは、その高い精度から効果的な活用方法が多数存在します。
特に、顧客理解を深めるために利用することが非常に重要です。
顧客理解には、基本属性である性別、年齢、職業などに加え、多くの補足情報が含まれています。
この情報を分析することで顧客をより深く理解し、製品やサービスに反映させることができます。
クッキーレスはデジタルマーケティングに大きな影響を与えます。
プライバシー保護の観点から、多くのWebブラウザーでサードパーティクッキーのブロックがデフォルトになっています。 具体的にどのような影響があるかを解説していきます。
ターゲティングとは、ある人物や層を特定しターゲットにした広告を配信することです。
クッキーが利用できなくなるとターゲット層の特定が難しくなります。
例えば、広告を配信したいターゲット層が30代男性であった場合、30代男性のWEB行動履歴を解析し配信先を決定することができます。
しかし、クッキーレスになるとこのような行動履歴が利用できないため、より広い範囲に配信することになります。
サイトの訪問ユーザーのデモグラフィック情報や、関心事を組み合わせたオーディエンスターゲティングにも影響が及びます。
そのため、より多くの広告費が必要になる可能性があります。
コンバージョンとは、商品購入、問い合わせフォームの送信、アプリのダウンロードなどWebサイト上での目的達成を意味します。
Cookieの保有期間が短くなることで正しい効果計測が難しくなります。
SafariではCookieが24時間で削除されるため、短期的なコンバージョンしか計測できない可能性があります。
iOSユーザーはIDFAが許諾制であるため、実際のコンバージョンよりも低い数値が管理画面上に表示され正確な数値の把握が困難になります。
アトリビューション計測とは、マーケティングの施策によって顧客がどのような経路でコンバージョン(商品購入、問い合わせなどの目標達成)に至ったかを分析することです。
顧客が最初にサイトに訪問した経路、どの広告をクリックしたか、どのコンテンツを閲覧してコンバージョンに至ったかなどを把握します。
サードパーティクッキーが利用できなくなると、クロスデバイスのアトリビューションが難しくなります。
つまり、同じ人物が複数のデバイスを使用してサイトを訪問してコンバージョンに至った場合、それらのデバイスを紐付けて1人の顧客として認識することができません。
そのため、各デバイスごとにコンバージョンが計測され、実際の1人の顧客が複数のコンバージョンとして重複して計測されることになります。
この問題を解決するために、GoogleやFacebookなどのプラットフォームは、ログイン情報に基づくユーザー認証によってクロスデバイスのアトリビューションを行っています。
しかし、ログインしていないユーザーに対してはクロスデバイスのアトリビューションが困難になるという課題が残ります。
クッキーレスでは、従来の方法であるサイト上のクッキーを利用したアクセス解析ができなくなります。
代わりにIPアドレスやユーザーエージェントなどを利用したアクセス解析が行われます。
しかし、IPアドレスはプライバシーに関わるためユーザーの個人情報保護には十分注意する必要があります。
また、サイト内でのユーザーの行動分析にも制限が生じます。
例えば、クッキーを利用していた場合は同じユーザーが複数のページを訪問した場合でもそのユーザーを識別し、行動パターンを分析することができました。
しかし、クッキーレスの場合は各ページのアクセス情報から別々のユーザーとして扱われてしまうため、より精度の高い分析が必要となります。
Googleアナリティクスはファーストパーティークッキーによってデータを収集していますが、iOSブラウザにおいてはクッキーの有効期限が短くなるためデータの欠損が発生する可能性があります。
ITPによって広告配信やコンバージョン計測に影響が出ていることはもちろんですが、サイト分析においても影響があるためデジタルマーケティング全般に対して適切な対策が必要です。
クッキーレスの状況を乗り越えるためには、新しいマーケティング戦略を採用する必要があります。
以下では、クッキーレスの中で行うべきマーケティング施策を紹介します。
クッキーレス環境下でも効果的なマーケティングを実現することができます。
今後、クッキーの規制により広告の費用対効果の測定が困難になったり、パフォーマンスが出にくくなったりすることが予想されます。
そこで、より重要になってくるのが広告だけに頼らない自社集客の仕組みを構築することです。
その方法の一つとしてオウンドメディアを運用することがおすすめです。
オウンドメディアとは、自社のウェブサイトやブログなど自社が保有するメディアのことを指します。
オウンドメディアは、ユーザーのニーズを満たすことができるコンテンツを提供することで検索エンジンからの集客が見込め、クッキーレス環境下でもユーザーの行動履歴を収集することができます。
自社がメディアやブログを持っていない場合は、FAQや各商品ページなどの既存コンテンツをブラッシュアップすることから始めることがおすすめです。
SNSアカウントを運用することで、クッキーレス環境下でもユーザーのデモグラフィックや興味関心を把握することができます。
例えばFacebookページを持っている場合、ページのいいね数やフォロワー数、投稿の反応数などからターゲットユーザーの属性を把握することができます。
また、SNS広告を利用することでターゲットユーザーに対して的確な広告を配信することができます。
SNS広告を配信しなくても、フォロワーの増加により自社の情報を効果的に伝えることができます。
フォロワーを増やすことは簡単ではありませんが、早いうちから対策しておきましょう。
コンテキストマッチは、個人の行動履歴を追わずにユーザーの興味関心に基づいて広告を配信する方法です。
クッキー規制はプライバシー保護を目的としています。
Googleは、プライバシーサンドボックスを推進することでプライバシーを重視した広告配信に取り組んでいます。
そのため、コンテキストマッチによる広告配信の重要性は今後ますます高まると考えられます。
一方、多くの企業がコンテキストマッチを利用することで、広告費用が高騰する可能性があることも考えられます。
クッキーレスは、今後も世界的なトレンドとして続くことが予想されます。
今後のマーケティングでは、ファーストパーティデータを収集し有効活用することが重要なポイントとなります。
この潮流に取り残されないためには、迅速かつ効果的な準備と対策が必要となるでしょう。
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